【2017年夏】15時間耐久イカ釣り大会(劇場版)
(お日様を拝めるのは生き残った者だけだ・・・)
いよいよ今年も始まってしまった「2017年夏15時間耐久イカ釣り大会」。
通称、「死のロード」とも呼ばれる過酷なイカ釣りだ。夕方に港を出港したら最後、次に大地を踏めるのは翌朝となる。風速・波高・天気を十分に鑑みての大会決行だが、「行くぞ」と社長の一言、つまり「勢い」だけで日取りを決める事も多い。そしてまだこの時期の夜の海は波が高く、木の葉のように揺れるプレジャーボートの上で一晩を過ごすこの大会は思ったより過酷で、鍛え抜かれたベーリング海のカニ漁師ならまだしも俺たちは至って普通のサラリーマンだ。
※鍛え抜かれたベーリング海のカニ漁師の動画はこちら
近所のスーパーで食料・水を大量に買い込む。船上での水・食料不足は命取り、万が一食料の奪い合い、ケンカなどが発生しては、例え生き残って上陸できても私達はサラリーマン、翌日からの業務に支障をきたし、給料・ボーナスに影響が出る事も必死なのでここは慎重に行きたいところだ。
最後は気力、体力、精神力。さあ、イカは釣れるのか、我々の運命やイカに。
メモ:午後18時
まだ暑いが出港は順調に進んだ。波も穏やかで期待できそうだ。うだるような暑さもこの時間となればだいぶマシだが、どうやら一番体力を使ったのは食料の買い出しだったようだ。
メモ・午後19時
現場海域へ到着。集魚灯を投入するにはまだ明るく、まずはジギングで魚釣りを楽しもう。水深は約70メートル。大物の期待ができる。
メモ・午後20時
釣れない。深い水深と速い流れでジギングもキツイ、その上だんだんと波が高くなって来たがここで異変が起こる。船長である社長が船酔いだ。20年以上も海と格闘して来たプロの男が船酔いとは何かの予兆か。本来なら「飯でも食うか!」の時間だが、船酔いしている社長に食事を勧めるワケにもいかず、まだまだ育ちざかりの私を含めたスタッフ2名も空腹の中、イカと戦う事になる。
メモ・午後21時
辺りはすでに真っ暗だが、船酔いにも関らず社長が根性のヤリイカを釣った。プロの底力を垣間見たが、波が高い、写真を撮る余裕などない。
メモ・午後21時半
現場海域での撤退を決断、もっと岸に寄る判断を下す。多少は波が治まれば良いのだが。岸よりの目的海域まで約5キロと言ったところか、暗闇での視界不良、うねりを伴う波の中、ビビりながらも操船を行い数キロ先に見える灯台や漁火を目指して荒れる沖から撤退した。ついさっきまではこんな感じで波も穏やかで夏満喫気分全開だったのに。
メモ・午後22時過ぎ
蓋井島近辺まで帰って来た。沖に比べれば多少は波も穏やかな感じがある。この海域でイカ釣り再開だ。しかし潮の流れが速い上、風も予想以上に高く船がかなりのスピードで流されるが、飯も食える波の高さでようやく晩飯にありつく。うまい。
ここでまさかのイカラッシュだ。まるで確率変動に入ったかのようにヤリイカが釣れる。ただし写真はあまりない。写真を撮ろうともたもたしているとスミを吐いて船が汚れるからだ。ここは3人の連携プレーで速やかにイカを釣り上げては生け簀に移さなければならない。
しかしここでもう一人のスタッフである先輩が社長に宣戦布告。大量のイカスミ砲を社長に向けて発射。見事に命中するその精度は狙ったものとしか思えないほど正確かつ大量で社長は見事にイカスミ爆弾を浴びる事になる。一番恐れていたボーナスカットなどに繋がらなければ良いのだが。
サイズは胴体部分で30センチほど、足まで含めるとなかなかのサイズのヤリイカが連発である。イカスミ爆弾が落ち着いた頃、船上でのイカパーティ開催だ。釣りたてのイカは本当に甘くて絶品だった。ただ食事を終えて間もない事もあり、3人で食べるも1杯のイカで十分だった。
メモ:深夜12時
眠気が襲う。ここからが真の戦いの始まりだ。
メモ:深夜1時
イカも順調に釣れるがそろそろ脱落者候補が現れた。イカスミを社長にぶっかけたイカスミ先輩の動きが怪しくなって来た。イカが掛かっているにも関わらず、そのアタリに気付かない、回収しない、つまり動きが鈍くなって来たのだ、あからさまにキテいる、眠気がキテいるぞ~。
「寝ていいぞ~」「いや、社長こそどうぞお先に」「いや、私は眠くないから」ここに男と男、意地と意地の張り合い・・・いや戦いが始まった。ここで社長より先に寝ると「あいつは先に寝た」というレッテルを背負って来年のイカ釣り大会まで言われ続ける事になる。むしろ先ほどまで船酔いで辛そうだった社長が年齢・体力ともに一番に「落ちる」大本命だったのだが、どうやら今夜の社長にその気配はなく、落ちそうにない。
メモ:深夜2時
竿を抱えたまま、先輩の動きが止まっては動き、止まっては動き、動いては止まる。おそらく「自分は落ちていない」という意思表示なのだろうけど、明らかに寝ている。(寝かせてやろう)という優しさか、今や竿を支えたまま落ちてしまったイカスミ先輩をよそに社長と私は一睡もせず、朝日を迎えるのである。
メモ:深夜3時
私も意識が飛び始めた。社長とお話しつつ、たまに夢を見るのだ。一番印象的だった夢は工藤静香と工藤静香のそっくりさんが歌で対決するTV番組を見ている夢だ。これが一体全体なんの夢かもわからないが、そんなレトロな夢を見ながら私もイカ釣りを続行していた。
メモ:深夜4時
うっすらと島影が見えてきた。どうやら日の出が近いようだ。イカスミ先輩はまだ寝ている。
メモ:朝方5時
完全に海が見える。操船可能だ、これならどこでもポイント移動可能だ。釣れたイカ(小)を餌にしてクエ・アラを狙いたいという社長の意向もあり、ポイント移動開始。イカスミ先輩もすっかり起きたようで妙に元気だ。
社長は釣れたヤリイカ(小)を流して底モノを狙いつつ、私はジギング開始だ。エギではなく、今流行りのスッテにキビナゴをくくりつけ&電気ウキ仕掛けでヤリイカを狙った私は1杯しか釣れなかった上に、社長のイカを取り込み中にバラすという、マイナス以上の失態を演じていた私の気合は尋常ではなかったが・・・。
メモ:早朝6時
しゃくってる最中に夢を見て、ジギングをフォールする時にも夢を見て、ジグ着底で起きては、また寝ながらしゃくる。どうやら限界だ。ジャパネット高田やマツコDXがたびたび登場する夢を見ながら終わりの時間までしゃくり続けたが・・・。
メモ:朝7時過ぎ
「釣れるか?」「いえ、まったく」。ついに納竿の号令が下された。まぶしい太陽が照り付けると同時に全員の気力も落ちた。さあ帰ろう。揺れない大地が今は恋しい。
メモ:朝8時過ぎ
港に着いた。帰りの操船はほとんど社長だ。私は「いつでも交代しますから!」と言いながら立ったまま寝ていた。私に気遣ってくれた社長がその道のりの8割を運転し、ラスト2割が私。社長スミマセン。社長、ほとんど寝てませんよ。
さて、イカは大量だが、魚はゼロ、というおもしろい釣果だ。さあイカをご近所さんに配る時間だ。しかしながらまだ時間も早いという事もあって、24時間営業のうどん屋で朝ごはんを食べるも、食べながら寝ている。こいつはいつ気絶するかわからない、私は車の運転もある事から腹八分に抑える予定が朝定食を完食してしまった。おいしかった。
メモ:9時過ぎ
ご近所さんへイカをお届けにあがり、この大会も終了となる。自宅へ帰りシャワーを浴びると膝あたりはあざだらけ。真っ暗の荒れる海では肉眼での波の予測が付きにくい事からカラダを支える為にあちこち打ったのだろう。
~釣果~
ヤリイカ30杯くらいと思いますが、妙に釣れたイカ釣りでした。さすがのタフガイ社長も「当分イカ釣りは行かなくていい」と帰りの車中で漏らしてたのだが・・・。
「もっと近場で行くぞ!近場ならきっとラクだ!」
翌日にはもう喉元過ぎてしまったとですか!あんなにきつかった記憶はいったいどこへ・・・。
おわり